2017-04

雨が上がると 2 - 2010.07.07 Wed

雨が上がると虹がかかる。

ということで、何を血迷ったのか(笑)。
降ってきたので書いてみました。

いちゃラブも原作「身代わり伯爵」の雰囲気も無い自己満足です。
ラウールとアレックスそして、ミレーユしか出てきません。
出版社、原作者とは一切関係ありません。
何を読んでも大丈夫な方だけどうぞ。

以下、二次というもので。


「窓越しの景色」

机の上に広がった書類と資料の山。間に置かれた書類を順に処理していく手元が急に暗くなった気がした。
顔を上げると目に入ってくる窓の先には雲が集まり始めていた。

日々の日課をこなすために、毎日同じ場所に座り、同じ窓越しの景色を見ているはずが、新緑の緑が日増しに濃くなり、窓越しの光も日に日に強くなっていく。
確実に毎日が過ぎていくことに焦りを覚えながら、目の前の仕事を終わらせることに集中する。
山のように積まれた書類は減らした数だけ増えていくのだ。
やりがいを感じてはいる。今の立場を得るためにかけた年月も犠牲も忘れはしない。
忙しさに紛れて記憶の彼方に追いやられているそうした事柄も、何かの拍子に現れては惑わせたり激励したり・・・。

パタパタと音がしたかと思うと、開け放された窓から勢いよく降り出した雨が見えた。
空を見ると真っ黒な雲。
急に強くなった風に書類を飛ばされぬよう急いで窓を閉めるために立ち上がる。

「あ、僕が閉めますよ。先輩はそのままで。」
「窓は一つじゃないからな。お前は向こうだ。」

目の前を急いで窓のほうへと駆け寄る姿は、そのままの勢いで向きを変えると、パタンパタンと開け放されている窓を閉め始めた。室内には二人しかいないが、資料が多いためある程度の広さがあり、いくつかの窓があった。

「何とか間に合いましたね。」
「当然だな。ボンクラのための資料ではあるが、用意する責任があるからな。」
「ははは。そうですね。立派な大公妃になってもらわないと・・・・・。」

眼鏡越しに苦笑する彼の言うことにいちいちうなずくほど、無駄なことも無い。
そんな時間があるならば単語の一つでも、問題の人物に覚えてもらわねばならないのだ。
所定の位置に座り仕事を再開する。

・・・・・パタパタパタ。と今度は足音が響く。
「何事だ。」
顔を上げると問題の人物が目の前にいた。

「何事だ。」
「お茶の時間です。」

師団の制服に身を包み、自らが用意した茶器と菓子皿を持ったまま高らかに宣言する。

「そんな時間は無いはずだが。」
「団長命令です。ラウール先輩とアレックスにこのお菓子の感想を訊いてくるように言われました。」
「僕の感想も?」

事の成り行きを眼鏡越しに興味深そうに見ていた彼は、まさか自分もその中に入っているとは思わず、慌てて立ち上がった。

「そうなの。昨日フレッド達とお菓子を作ったから、団長と副長にもさっきおすそ分けしてきたんだけど。副長に二人にはもう渡したのかと訊かれて。」

本人も少し戸惑ったように笑っている。
「渡しに行く予定だったからちょうどよかったんだけど・・・・・。」
ちらりとこちらの様子を伺う。
「菓子を作っている時間があるなら、単語の一つでも覚えてもらいたいものだな。」
憮然として言い返すと、
「そう言われると思っていました!」
反抗的な態度が返ってきた。

「まあ、とにかく、団長命令ということならいただきましょうよ。」
「そうだな。無駄な時間は少ないに限る。」
「じゃ、じゃあ、こちらに用意しますね。」
嬉しそうに使われていない片隅のテーブルへと近づくと準備を始めた。
いそいそとお茶とお菓子の準備をする様子を見ると、以前よりも所作が婦人に見えなくもなくなってくるから不思議だった。
修行の成果が出ているのだろうか。

「きみは食べていかないのかい?」
用意された茶器は二つ。
「うん。団長達と一緒に済ませて来たから。・・・・・それよりも感想を。」
きらきらと目を輝かせて訴えてくる。
皿に手を伸ばし、二人とも一つずつつまむと同時に口の中に放り込んだ。

「あ、おいしいね。」
「え?ほんと?よかった。団長達にも美味しいとは言われたんだけど。シアランのほうが美味しいお菓子が多いから。それに、このお皿もお菓子と色合いを考えてみたんだけれど。」
恐るおそる切り出す。
「いいと思うよ?美味しそうに見える。シアランの特産だし・・・・・。」
「シアランは食材も豊富だからな。」
思っていたよりもまともな味に仕上がっていた菓子は材料もよかったのだろう。港を持っているシアランには様々な物が入ってくる。
「そうなんですよね。リゼランドで手に入りにくいものもシアランでは手に入れやすかったりしました。」
神妙な顔をして製作過程における発見を披露している。

「きみは食べ物に関することなら、眠たくならずに資料も読めそうだね。美味しかったからもう一個もらってもいいかな?」
「ええ、もちろん!」
呆れたような、感心したような顔をして差し出された皿に手を伸ばす彼をまじまじと凝視している自分がいた。

「それだ・・・・・。」

「え?何か言いましたか?」
菓子皿を持ち、振り返った顔にびしっと指を突きつけると、
「お前には、食べ物からだったんだな?」
世界に一筋の光を見た気がした。

「本を開けば、そのまま意識を失い。試験をすると時間内に問題を読むことすらできない・・・・・。正直どうすればいいのか行き詰っていたことは確かだ。覚えなくてはならないことは山ほどあるというのに、一向に消化できない予定をもてあますことしかできなかったが。今、一筋の光が見えた。・・・・・食べ物だ。食べ物に関することならおまえはいくらでも覚えることができるのではないか?」

「え?・・・・・お菓子は好きですけど。」
自分の考えに確信を持った。そして、数々の餌付けの場面を見ていながら、今の今まで気がつかなかった自分の洞察力のなさにもうちひしがれる時でもあった。
だが、耐性はこの前ついたはずだ。いや、同じ間違いは二度としない。そんな時間の無駄は必要ない。
「早速だが、今から仕事にかかる。アレックス、今まで作った問題は破棄だ。新しくすべて作り直す。」
決意を新たに所定の位置に戻り、早速ペンを走らせる。

「え?・・・・・どういうことなの?アレックス。」
「・・・・・団長命令の意味がわかった気がするよ。きみも覚悟したほうがいいよ?今まで以上にラウール先輩は張り切って宿題を出してくるだろうから。」
「えぇっ?どういうことなの?お菓子の感想を訊いてくるはずが・・・・・。」
動揺しきった彼女にとりあえず二人の感想を団長に報告してくるように促すと、張り切る上司に付き合わなくてはならない自分の準備を始めた。

夕暮れも間近になり、つい先ほどまで降り続いていた雨もやみ、きらきらとオレンジ色の光を反射して木々が輝いていた。

―終わり―

ええっと。いろいろすみません。
sakura様の第五師団ネタに触発されたようです(笑)。
七夕の願い事は字が上手に・・・・・。ということだったはずが。
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● COMMENT ●

桔梗さま

コメントありがとうございます!
イゼルス命令・・・そうですね(笑)。まあ、団長命令のほうが副長命令より響きがいいのかな?と。
勉強・・・一応各国の歴史やら文学やらと新刊にありましたが(笑)。
お菓子材料の流通やら農産物の分布とか?
そんな問題やら芸術的な献立について書かれた詩やら探せばあるんじゃないかと(笑)。
コック長の歴史とか出身地による調理の仕方の違いとか?そんなことを考えました(笑)。
楽しんでいただけてよかったです。
最後までお付き合いくださりありがとうございました。

おばんでがす

第五師団!
ラウールもアレックスも大好きです(笑)。
ジャック命令よりかはイゼルス命令な気がします……。
なんか、算数の文章題をお菓子にして解かせる戦略のようですね。
というか、ミレーユはラウールたちと何の勉強しているのでしょうね? まさか礼儀作法やダンスを第五師団の書記官からは学ぶまい。シアランの地理とか歴史とか学問だとは思うのですが。
楽しく拝見しました。

sakura様

コメントありがとうございました!
すみません。いろいろと・・・・・(汗)。
お菓子・・・料理本による新作をイメージしました。ミレーユお菓子作りは得意なんですよね?(笑)フレッドとヴィルと三人だけで食べるのはパパが許してくれなさそうです(笑)。
リヒャルトのために用意した分はパパに食べられてしまうかもしれませんね(笑)。
お菓子皿・・・クラウディーネ様の陶芸ネタがそのうち出てくることを期待して(笑)。
ラウール・・・新刊でもやもやしていたのでいろいろと捏造。別人のように・・・・・。
きっと仕事ができる人なので、いかにミレーユに教育を施すか試行錯誤はしてくれると思います(笑)。
うたた寝・・・ラウールも「俺」ということに今更ながら気がつきました(笑)。
・・・七夕なのにちっともロマンチックじゃない・・・・・orz。

最後までお付き合いくださりありがとうございました。

創作第二弾!

こんばんは。
身代わり創作第二弾!を拝読させて頂きました。
しかも、ラウール(主役)とアレックスの話で、二度びっくりしました(笑)!
私が描いた第五師団ネタで、moaさまの創作魂に火を付けることが出来たなら、こんなに嬉しいことはありません(泣)!
お菓子はミレーユ得意のビスケットでしょうか。それとも、料理本の中にあった新作でしょうか。そして、フレッドとヴィルフリートの三人で作ったのでしょうか。勿論、リヒャルトにもたくさんのお菓子が用意されているのですよね(笑)。もしくは、リヒャルトの為に作ったとか。ミレーユ手作りのお菓子を、ジャックとイゼルスの三人で食べたかと思うと微笑ましいです。読みながら、色々な妄想が膨らみました(笑)!
お菓子皿にも気を配るミレーユが女の子していて可愛いです。
ラウールの新問題の内容が気になります。ミレーユには正解数に応じてお菓子を与える方法が有効に思います(笑)。
七夕の日に、素敵な創作をありがとうございました!


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