2017-04

雨が上がると 5 - 2010.08.28 Sat

雨が上がると虹がかかる。

ということで、何を血迷ったのか(笑)。
降ってきたので書いてみました。

いちゃラブも原作「身代わり伯爵」の雰囲気も無い自己満足です。
ママとおじいちゃんとアルテマリス組み?です。

出版社、原作者とは一切関係ありません。
何を読んでも大丈夫な方だけどうぞ。

以下、二次というもので。


『重なる面影  ~アルテマリスにて~ 』


「殿下にお願いがありますの。」
微笑をたたえた婚約者が小首を傾げて要求して来た。
「なにかな?私で叶えてあげられる事ならいくらでも。」
いつも通りの会話。意外なお願いは意外なほど簡単に叶うことになった。

「ねえ、とうさん。この王宮からの手紙ってどういうことかしら?」
ジュリアはその手紙を持ってきた騎士を背に、父親であるダニエルに向かって、小首を傾げた。
「どれどれ。」
ダニエルは手渡された手紙に目を通した。
美しい文字で書かれたその内容は、ジュリアとダニエルをお茶会へと招待するものであった。
差出人は白百合の姫。
養子へと出された息子が騎士団長を務めているその主。
手紙をもたらしたのはその団員。
子供たちの誕生日会で知り合った彼らは気のいい筋肉青年達で、本当に王宮勤めなのかしら?と疑ってしまうほど気さくな青年達だった。

ジュリアとダニエルは二人で顔を見合わせたあと、騎士団の青年に改めて向き直った。
「ジュリア様、ダニエル様、わが主の招きに応じていただけますよう。お願いします。」
正式な使者らしく、しかめ面をしたまま胸に手を当て頭を下げる。
「応じていただくも何も、さっぱりわけがわからないわ。どうしたらこうなるのよ?」
「まったくだな。わけを教えてもらえるかな?セオラスさん。」
赤毛の頭を上げて、苦笑すると旧知の騎士セオラスは口を開いた。

「ええとですねぇ。シアランでの政変がひとまず落ち着いたので、その報告をしたいということなんですよ。それで隊長の仕えるセシリア様がお茶会を開くときに紹介する。ということになったんです。」
「・・・・・全然わからないわ。」
呆気に取られたようにジュリアが答えると、隣でダニエルも頷く。
「まあ、わからなくても大丈夫です。単なる手続きですから。王太子殿下が城下に下りるわけには行かないので、あなた方に登城していただくと。そういうことなんですよ。」

「・・・・・そんな簡単なものなの?」
「簡単じゃないですが、王太子命令なので。」
セオラスは真顔で答える。
「・・・・エドの手紙じゃあ、結局どうなったのかよくわからなかったから。はっきりしたことを聞きたいと思っていたけれど。今日の今からって・・・・・行きたくないといったら?」
挑むようにジュリアは問いかけるが、
「もちろん俺らの責任になるんで。困ります。というか、連れて来るまで居座れって言われてるんで。」
しれっと返された。

「・・・・・なんてわがままなの・・・・・。これだからお貴族様っていうのは・・・・・。」
怒りに震えるこぶしをどこにもぶつけられずにいる姿は、ここにはいない娘とよく似ている。
「まあまあ。実際のところは、お嬢の嫁入りが決定したから、少しでも宮廷の雰囲気を姐さんに知っておいてもらった方が良いんじゃないか?ってところらしいですよ。それに、王太子妃のリディエンヌ様はリゼランドのご出身なので、同郷のお嬢たちには随分と思い入れがあるらしくて。なかなかあの方々も多忙で都合がつかなかったんですよ。」
「・・・・・だからってねえ。」
隣にいるダニエルの方を向いてジュリアは溜息をつく。
セオラスはパチリと両手を合わせて、
「すんません。お願いします。」
と頭を下げた。

「ねえ、このドレスで本当に大丈夫なのかしら?」
馬車の向かい側に座ったジュリアは、袖や裾をあちこち引っ張りながら、眉間にしわを寄せる。
「まあ、エドが選んだものだから大丈夫だろう。執事のロドルフさんも太鼓判を押してくれたし。むしろこの格好の方が大丈夫かね?」
苦笑しながらダニエルは両手を広げて見せる。
「・・・・・それこそ、大丈夫なんじゃない?一応、公爵家の仕立て人が自信を持って直してくれたんだから。フレッドが着ているときはなんとも思わなかったけれど。とうさんが着るとものすごい違和感はあるけどね。」
「そうだなあ。見慣れない姿だな。」
襟や袖口を飾るレースは娘を飾り立てるものだと思っていたが、まさか自分が飾られるようになるとは思わなかった。

ジュリアのドレスに関しては、侍女頭のネリーさんが喜び勇んでエドのコレクションから選び抜いたものだ。
いったい彼はミレーユのドレスといい、ジュリアのドレスといい、どれだけ一緒に暮らす夢を見続けていたのか。
あまりの無駄遣いに、とてもじゃないがジュリアに衣裳部屋を見せる勇気はなかった。
そして、自分が身に着けた衣装といえば、エドとフレッドの衣装を手直ししたものだ。
フレッドの衣装では派手すぎて、エドの衣装では大きすぎたのだ。
さすがに、身分ある家柄の職人達であって、実に手際よく、見栄えよく仕立て直された完成品には職人魂を揺すぶられた。
数時間後、出来上がった即席の貴族の父娘は、執事のロドルフや他の使用人たちに見送られ、白百合の騎士に護られて馬車に揺れる事となった。

「・・・・はあ。これが王宮なのねぇ。エドのお城も大きいけれど。それ以上ね・・・・・。」
門をくぐり、庭を抜けて、建物の間を移動する間は、あんぐりと開いた口がふさがらなかった。
馬車を降りる頃には溜息をつきすぎて、すでに疲労困憊になっていたほどだ。
「さあ、着きましたよ。これからは歩きです。」
護衛と案内をかねたセオラスともう一人の騎士は二人の前後について導いてくれる。
視界に入る壁や天井の装飾を見ているうちに目が回りそうだ。
騎士の背中を見失わずについて行くことに随分と集中力を使いそうだった。

幾つもの廊下と階段を過ぎて、帰り道もわからなくなった頃に、
「到着しましたよ。この扉の向こうに庭園があるんですが、その四阿にみなさまいらっしゃいます。」
セオラスが、扉の前で振り返って説明する。
「ど、どうしたらいいのかしら?」
はたと、我に返ったジュリアは、途端に緊張し始めた。
「訊かれたことに答えればいいんですよ。なーに、すぐ慣れますよ。大丈夫ですよ。後ろに控えてますんで。何かあったら呼んで下さい。」
パチリと片目を瞑るセオラスの様子はフレッドを思い起こさせた。
「・・・・・ありがとう。がんばってみるわ。」
ジュリアとダニエルはゆっくりと庭園の中へと足を踏み入れた。

開かれた扉の向こうから歩いてくる婦人は、きょろきょろとした様子で落ち着かない。
隣に座っている婚約者は、待ちかねた人物を輝く紫の瞳で見つめている。
その向かいにはこちらもまた、琥珀の瞳を煌かせ興味津々の様子で妹が見つめている。
二組の熱心な視線に気付かぬはずもなく、ぎくりとした様子でこちらを見ると、急に立ち止まった。
そばに控える赤毛の騎士が、何やら耳元でささやくと、決心したような顔で再びこちらの方へと近づいてきた。
その頭上を見上げると、立ち上がった陛下と王妃が軽く合図をして身を潜める。
・・・・・王弟エドゥアルトの積年の想い人をひと目見ようと、リディをそそのかしたのだった。

主催者である妹が椅子から立ち上がり、ドレスの裾を持ち上げて軽く会釈をする。
「ようこそいらっしゃいました。セシリアと申します。」
上気した頬は隠しようもなく、バラ色に染まっている。
「お初にお目にかかります。ミレーユの母のジュリアと申します。こちらは祖父のダニエルです。」
ぎこちない様子で挨拶を返し、硬い表情でそのまま立ちすくんでいる。
セシリアは緊張した面持ちで数瞬の間、ジュリアの顔を見つめていたが、自分の役割を思い出したのか、兄と義姉の紹介を始めた。
「こちらは王太子殿下のアルフレートお兄様です。そして、妃殿下のリディエンヌお姉さま。どうぞこちらにお座りになってください。」
セシリアとリディエンヌの席の間に用意された椅子をすすめる。円卓を囲んでお茶会が始まった。

「初めまして。ジークと呼んで下さい。もう少し緊張を解いてくださいますか?」
黄金の薔薇と謳われる美貌の王太子はそういって、優雅に微笑んだ。
「こんなに美しいご婦人とは。叔父上が忘れられないわけですね。フレッデリックとミレーユは無事にシアランで過ごしています。公爵家では何か連絡が来ていますか?」
そつのない挨拶を済ますと、早速本題に入った。

「は、はい。エド・・・ベルンハルト公爵から手紙が来ました。ミレーユはシアランで暮らすことになったと。」
王太子の堂々とした様子に圧倒されながらも、ジュリアが躊躇いながら答える。
覚悟していたこととはいえ、下町の娘が他国の后妃となるなど想像もつかない。ましてや、自分の娘が。

「ミレーユがフレデリックの代わりにこの王宮に出仕していたことはご存知でしたか?」
微笑を絶やさずに穏やかに語りかける様子に、ジュリアも次第に緊張がほぐれてきた。
「はい。長く伸ばしていた髪をばっさりと切ったあの子を見た衝撃は忘れられません。エドを問い詰めても、ワケの分らない事を言うだけだし。本人が自分で切ったのだから大丈夫だと止めなかったら、今頃はリゼランドの土の中ですよ。」
思い出したのか、憮然とした様子で言いつのる。

「ははは。さすがにミレーユのご母堂だけありますね。」
優雅に微笑まれて、さすがに言い過ぎたとジュリアは口をつぐむ。
「それで、新大公に即位したエセルバート、リヒャルトのこともご存知だとか。」
少し、探るような声音を不思議に思いながらも、ジュリアは優しげな青年を思い出した。

「はい。シジスモンに迎えに来たときと、・・・・・あの子達の誕生日会にミレーユと二人でいる様子も見ました。シアランに出発するときには、エドに挨拶に来たのですが、泣きじゃくって話にならなかったので、あたし達にも挨拶して行ってくれました。ね。とうさん。」
隣に座っていたダニエルに同意を求める。
「いつも礼儀正しい子で。フレッドやミレーユが楽しそうに彼の話をしてくれましたよ。」
懐かしそうに微笑んだ。
「詳しいことはわかりませんが、リヒャルトさんも、ミレーユも無事と聞いて安心しました。」
ダニエルの穏やかな口調にその場にいたみなが知らず微笑を浮かべていた。

(・・・・・こちらが伯爵のお母様・・・・・。伯爵の整った顔立ちはお父様似だけれど、ふとした表情がお母様そっくりなのね。)
円卓の上の采配をしながら、兄と客人の会話に耳を澄ましていたセシリアはそっとジュリアの顔を盗み見ていた。
もう一人の兄は恋人の家族とも意外と交流を深めていたらしい。城の外でも相変わらず真面目でお堅い様子はうかがえるけれど。
家族と同じように心配されていたと聞いてあたたかな気持ちになった。

和やかにお茶会は進み、緊張していた様子のジュリアとダニエルは寛いだ様子で、目の前に用意されていたお茶にも手を伸ばすようになっていた。

「本当に、みなさまが無事で安心いたしました。他国へと嫁ぐ不安もありましょうけれど、ミレーユさまなら大丈夫ですわ。」
大陸随一と呼ばれる美貌で微笑まれると、同性でも頬を染めてしまう。例に漏れず、ジュリアもこの美貌の妃の微笑みに見惚れた。
と同時に、ミレーユが同じような立場になることに思い至ると、血の気が引いたように青ざめた。
「ミレーユは・・・・・本当に大丈夫でしょうか?」
ジュリアの青ざめた顔を見ながら、ダニエルは確認するようにつぶやいた。

「大丈夫だと。ここにいるものはみな思っていますよ。」
王太子は落ち着いた声で断言する。
「ええ、あの、ミレーユさまなら。大公殿下を助けて立派な妃殿下におなりになりますわ。できれば、ご一緒にこちらの殿下を支えていただきたかったのですけれど。」
リディエンヌが不本意な様子で婚約者を上目遣いに見つめる。
「残念ながら、シアランへ行かれてしまいましたわ。」

「私の責任なのかな?」
リディエンヌの視線にジークは優雅に返事を返す。
「ええ、殿下の後宮に一緒に入っていただこうと思っていましたのに。そうは思いませんか?セシリアさま。」
突然、話を振られたセシリアは、一瞬呆然としたように目を見開いたが、
「そ、そうですわね。で、でも、そうすると新大公殿下が悲しまれますわ。」
兄の姿を思い出しながら、そう答えると、
「そうだな。彼の恨みを買うくらいなら、リディに見つめられていた方が心安らかというものだ。」
婚約者の手を取りながら、当たり前のように頷くもう一人の兄が頼もしく感じられたのだった。

「・・・・・周りが見えなくなる子だから・・・・・。」
ぼそりとジュリアがつぶやくと、リディエンヌはジークの手を取り外して、そばにあったジュリアの手を固く握ってその目を見据えた。
「その一途さがミレーユさまの真価ですわ。周りで助けるものもたくさんおります。信じてあげてください。何よりも、お二人の絆が強いものであることはよくご存知のはずですわ。」

「・・・・・そうですね。きっとやり遂げてくれると信じます。」
フレッドに諭されていた真夜中の家出を思い出す。もともと頑固な負けず嫌いだけれど・・・・・。
可愛い大事なただ一人の娘。信じた道を二人で進んでいって欲しい。
吹っ切ったように断言すると、二輪の花は美しく微笑んだ。

通り過ぎてきた廊下と階段をセオラスに案内されながらまた引き返し、馬車に乗り込んだ頃には二人はぐったりとしていた。
城下にたどり着くまではと起きてはいたのだが、門をくぐりぬけた頃には揺れに任せて舟を漕いでいた。

「おかえりなさいませ。」
馬車の扉が開き、執事のロドルフの声で覚醒した。
「・・・・・。ただいま帰りました。ほんと、疲れたわ。」
「よくがんばったな。」
ジュリアのぐったりとした様子に苦笑しながら、ダニエルが励ます。

「おつかれさんでした。さすが、隊長とお嬢の母上ですよ。堂々としたもんでした。」
馬車から降りて館の中へと向かいながら、セオラスが感心したように話しかける。
「フレッドもミレーユも大変ね。でも、何とかやっていけそうみたいだから・・・・・。ちょっと安心したわ。」
「そうだな。」
二人のいる南の方に向かって、ジュリアとダニエルはにっこりと微笑んだ。

「とても素敵な方でしたわ。」
頬を上気させて、リディエンヌとセシリアはお互い手を取り合いつつ、感想を言い合っている。
退出した扉の上を見上げると、陛下と王妃が満足した顔をして合図を送っていた。
ジュリアのころころと変わる表情がミレーユともよく似ていたことを思い出した。

~終わり~

最後までお付き合いくださりありがとうございました。
・・・・・イロイロトスミマセンデシタ。
ジーク視点になっていたかしら・・・・・?と言う代物。
新刊ではアルテマリス側も触れられていると良いなあ。

追記 2010.8.30
ちょっと書き足しと直し。ハンスじゃなくてロドルフさん。
・・・・・orz。

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● COMMENT ●

sakura様

コメントありがとうございました!
過分なお言葉・・・恐縮です。

アルテマリス組・・・読みたいですよね!(笑)。脱獄犯がらみで出てくるかな?と期待しています。リヒャルトさんが里帰り挨拶発言もしているので、そのうちに出てくるのかな?と。こちらも期待(笑)。

セオラスと団長の会話が楽しみなんですが(笑)・・・・・みがはくのこれからの方向性が全くわからないので(苦笑)短編に期待するべきか本編に期待するべきか・・・・・(笑)。
新刊があらゆる意味で気になります(笑)。

最後までお付き合いくださりありがとうございました。

身代わり二次!

こんばんは。
今回の話も、とても素晴らしかったです!

本編では全く触れられない、その後のジュリア達を補完してくれているような話でした。ありがとうございます。
ジュリアだけでなく、祖父ダニエルの視点でも描かれているのが素晴らしいです。

原作でも短編で良いので、リヒャルトがシアラン大公になったと知り、更にミレーユが大公妃になると知った時のジュリア達の様子を描いて欲しいです。
それとは別に、アルテマリス組とシアラン組が協力する話が短編になっても面白そうだと思いました。


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