2017-04

雨が上がると 15 - 2011.02.07 Mon

雨が上がると虹がかかる。

ということで、何を血迷ったのか(笑)。
降ってきたので書いてみました。

いちゃラブも原作「身代わり伯爵」の雰囲気も無い自己満足です。
薔薇の国の仲良し義姉妹+紅薔薇の人が少し。です。

出版社、原作者とは一切関係ありません。
何を読んでも大丈夫な方だけどうぞ。

以下、二次というもので。







『台詞と情熱』



「結婚式の日取りがお決まりになったそうですね。おめでとうございます。」
「ありがとうございます。セシリアさま。」
『雪の妖精』もかくやという微笑で答えられると同性であっても、知らず頬が赤くなってしまう。
婚約者である『アルテマリスの黄金の薔薇』と称えられる王太子と並んでも何の遜色もない美しさは、さぞかし語り草となるだろう。

「それにしても、ミレーユさまたちもご出席がかなうと聞いて、本当に嬉しく思いますわ。」
薄紅色に頬を染めてうっとりとした様子は、恋する乙女そのものである。
いつもの王太子である兄とのじゃれあいとは明らかに異なった様子に、セシリアは目を瞠る。
初夏の風が心地よい中庭で、恒例となった乙女のお茶会。
赤毛の王女しかいないにもかかわらず、妖精がその美貌を惜しみなく振りまいている。

乙女劇団を主宰するリディエンヌは、自らが女優として主役を張るほどの演技力を誇っている。
脚本を担当することになったいつかの『白百合姫』には、心の底から感激したものだ。
自分が描いた以上に情熱的に演じられていた台詞の数々。
秘密の挿話が目の前で演じられていることに、人知れず頬が赤くなっていないかと心配もしたけれど。
それ以上に、演じられる劇団員の情熱が彼女自身に届いて、ぐいぐいと世界に引き込まれていった。
自らが脚本を書いたとも思えず、劇が終了したときには、本当に心から拍手を送っていた。
今でも心に鮮明に思い描ける各場面の様子に、胸の鼓動も変わらないままだ。

「ミレーユさま方も正式に婚約されたと聞きました。ミレーユさまをこちらの後宮にお呼びできないことは、本当に悔しく思っているところですが。シアランの情勢も一段落といったところでしょうね。」
残念そうな表情に、彼女の本気を垣間見て、二人の兄を少しお気の毒に思ってしまったのだけれど。
「・・・・・そうですわね。シアラン大公殿下とのご婚約は本当に嬉しいことです。」
聖誕祭の夜。ミレーユへの気持ちを照れたように告白したあの表情を思い出して、セシリアは幸せな気持ちになる。

自分のことは何も望まずに過ごしていたのだろう。
騎士として傍に付いてくれた遠い日から。
・・・・・いえ、隠された身分を堂々と名乗っていた頃から?
見ているこちらまで心浮き立つようなあの微笑みは、彼にとってさぞかし特別扱いされてきたであろう自分ですら、見たことがなかった。
小さな自分が幸せになること。そればかりを気にしてくれて。
アルテマリスでの居場所が確保できるようにと心を砕いてくれていた長い日々。
わがままばかりの自分をただひたすらに大切に、甘やかしてくれた信頼できる人。
重ねた月日は大切な思い出だったけれど。
それでも、自分にとって何よりも大切な人である彼に幸せになって欲しかった。
その幸せが自分では与えることができない事に、ひどく遣り切れない気持ちになって、思わず八つ当たりをしてしまったことも数え切れない。
そんな時も、優しく最後まで微笑んで付き合ってくれた人。
その笑顔も素敵だったけれど。それ以上に、愛する人とともに並んで微笑んでいる姿の方がずっと素敵だと確信している。

「ジークさまからお聞きした話では、護衛の騎士団の方たちに塩が必要なほど、お二人の間には甘い空気が漂ってらっしゃるそうですわ。」
くすりとリディエンヌがセシリアに微笑む。
「あの、お堅い方が・・・とあまり想像はできませんが・・・。」

「塩ですか・・・。」
彼の台詞には時々素晴らしい爆弾が含まれることをリディエンヌは知らないらしい。
その気もないのに、乙女を惑わす言葉を時々発する彼の言動は、女性に対して心を許しているかどうかを判断できる基準になるのだろうか?
自分に対して、全く恋心なんてあるはずがないのに、つい口説かれているのかと間違えてしまいそうになる台詞を聞いたことは両手では足りなかったはずだ。
ミレーユに対して、心を許しているであろう彼が、どんな言動で彼女と話をしているのか・・・・・。
想像しただけで、セシリアも塩が必要だというシアランの騎士団に少し同情をしてしまった。

「麗しい姫たちが何の相談事かな?私もぜひ混ぜて欲しいものだな。」
そう言って、突然中庭に現れた人物に、空想に耽っていたセシリアははっとした。
「ジークさま・・・。乙女の集いですのよ?」
と、リディエンヌが冷めた笑顔で応対する。
婚約者の冷たい態度に少なからずがっかりしたような様子だったが、すぐさま気を取り直したように笑顔で話を続ける姿は、セシリアが紅薔薇宮に来てからというもの見慣れてしまった光景である。

この二人の婚約者達の関係も、時折不思議には思うことはあったが、セシリアの知っている恋愛小説に時々描かれている様子とよく似ていた。
政略結婚という形ではあるが、相手を本心から想っている関係をひどく羨ましく感じるのは、セシリアが心を伝えたい相手が今は遠くにいるからだろうか?

「先ほど、フレデリックから報告が届いてな。リゼランドの貴族事情についてリディに問い合わせだ。それと、セシリアに書物も同封されていた。」
そういって、差し出された一冊の本は、セシリアにはお馴染の作家が書いた新作だった。
伯爵のお友達だというその作家は、創作意欲が旺盛らしく、もう何十冊とセシリアの書架にも作品が納められている。
すべての話に共感できるわけではなかったが、乙女の憧れが詰まったその作品一つ一つに丁寧にカバーを掛けることで、作家への敬意と伯爵への感謝を ひっそりと込めていた。

「ありがとうございます。お兄様。」
両手でそっと受け取ったセシリアは、そのまま、大事そうに胸に本を抱える。
異国での仕事を果たしている合間に、こうして、自分の事を少しでも思い出してくれているのだろうか?
それとも、女性にすこぶる人気のある、あの伯爵のことだから、呼吸をするくらい当然のように、様々な女性に贈り物を贈っているのだろうか?
・・・・・どちらでもいい。
少しでも、伯爵の気配が感じられるようで、セシリアは胸の鼓動が速くなっていることに、頬が染まる気がした。

「そういうわけだから、セシリアにはすまないが、協力してくれるかな?リディ。」
「セシリアさまには本当に申し訳ありません・・・。というよりも、わたくしがとても残念ですが。・・・ジーク様にお付き合いしなければなりませんね・・・・・。」
嬉しそうなジークとは対照的に、リディエンヌは心から残念そうにセシリアを見つめた。
「わたくしも、早速こちらの新作を読みたいので、ここで失礼いたしますわ。」
婚約者達のお茶会の始まりに苦笑しながら、早々にその場を辞する事にする。

「・・・・・フレデリックさまもミレーユさま方と一緒にこちらにお戻りになられるんでしょうか?」
自室へと急ぐセシリアの後ろ姿を見つめながら、リディエンヌはジークに問いかける。
「さて。それはどうかな?シアラン情勢も代替わりは果たしたが、不穏分子が一掃されるにはまだまだ時間がかかりそうだからな。」
さりげなく自分の指先をとらえて、彼の唇へと近づけるジークを全く見ることもなく、セシリアが建物の中に消えていくのを心配そうにリディエンヌは見つめ続けたのであった。

自室へと辿り着いたセシリアは、早速、長椅子に腰をかけて本の表紙を開いた。
瞬間、ひらりと一枚の便箋が舞い落ちる。
薄青色の便箋は、見たことのあるものだった。

『 親愛なる王女殿下

─今回の新作は、剣の腕も立ち、背の高い栗色の髪の青年が大活躍する恋物語です。
お相手の金髪の女の子はとっても可愛いらしいのですが、私の美貌がかすむことはありません。
どうぞ心より楽しんでください─

     フレデリック・ベルンハルト』

「・・・・・一体どういうことかしら?」
いつも直接届けに来るため、手紙を一緒にもらうことなど初めてのことである。
短いものではあるが、一文字一文字を伯爵が書いたのかと思うと、一つ一つがきらめいて見えてくる。
顔を見ることができなくなって、随分と経つけれど今にも伯爵の声が聞こえてきそうになる。
ゆっくりと宝石を愛でるように便箋を見つめる。

本の紹介のようだが、どこかで見た姿かと思うのは気のせいだろうか?
恋物語という言葉にセシリアは胸がときめく。
(・・・・・どんな意匠にしようかしら?)

読み終わったセシリアが真っ先に思い浮かべたのが塩の小瓶だったことはもう少し先の話。


~終わり~

イロイロと失礼しました。
アルテマリスが気になりすぎているようです(笑)。
フレッドさんの手紙とかどういう文面か謎ですが(汗)。
そして、アンジェリカの作品はセシリアにどの程度渡されているのかわかりませんが(笑)。
ヴィルに教育上云々とか言われていて幸せになりました(笑)。

最後までお付き合いくださりありがとうございました。



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