2017-04

雨が上がると 23 - 2011.11.17 Thu

雨が上がると虹がかかる。

ということで、何を血迷ったのか(笑)。
降ってきたので書いてみました。

いちゃラブも原作「身代わり伯爵」の雰囲気も無い自己満足です。
主役二人ということで。

出版社、原作者とは一切関係ありません。
何を読んでも大丈夫な方だけどうぞ。

以下、二次というもので。






『鮮やかな色』


山積みされた資料の先の窓が夕暮れに染まる。
差し込まれる鮮やかな光の移ろいに気づいたのは、部屋の中央のテーブルに置かれた今日の主役の色合いに近かったせいだろう。

窓から射す光ではそろそろ書かれた文字が見えなくなっている。
灯を用意しなくては。そう思いながらも、あともう少し。あとひとつ。
課題の資料の山に目眩を覚えた衝撃から立ち直ったからといって、その山積みされた高さが減るわけではないけれど。

・・・・・もう何度目かしら。
難しい本を読むと眠たくなるだなんて、子供じゃないんだからと思うけれど。
閉じようとする瞼に抵抗しようと気合いを入れる。
かくりと机に倒れこみそうになりながら、その誘惑に抗う術を未だ身につけられない。

はっきりとしない意識の中、扉がノックされる音が聴こえた。
・・・・・いけない。もうそんな時間かしら。
まだ薄暗くなる少し手前ということは、睡魔につかまっていたのは、ほんの一瞬だったらしい。
ぼんやりとしたまま、机の前から立ち上がり、扉のほうへと向かう。

「入りますよ。」
ゆっくりと扉が目の前で開く。
待ち望んでいたその人だと確認している間に、するりとその人物は部屋へとすべり込んできた。

「おかえりなさい。」
「ただいま。」
ゆっくりと扉が閉まると同時に、爽やかな笑顔があらわれる。
まだ挨拶も終わらないうちに、冷たい指がこめかみから頬に触れる。
思わず目を閉じると、耳元に感じる温かな吐息はそのまま柔らかな感触に変わった。

少しくすぐったくて首をすくめると、笑いを含んだ甘い声で名前を呼ばれた。
返事の代わりにゆっくりと目を開ける。
見つめる先には優しい鳶色の瞳。その瞳の中に幸せそうな自分の顔が映っている。
・・・・・きっと先刻までの顔とは天と地ほど差があるのではないかしら。
一緒にいられる事が嬉しくて、このまま時が止まればいいのにと願う。

唇から優しく自分の名前を紡がれていく。
名前を呼ばれる度に胸の鼓動が速まる。
心臓に近いのは自分のほうなのに。自分の鼓動しか聞こえない。

近づいてくる距離に相変わらず動揺したままの自分。
それがくやしくて、頬に触れたままの指先に自ら手を重ねてみる。
少し温かくなった指先に重ねた指をなぞられる。そのままあっという間に長い指先に絡め取られてしまった。

絡まった指と指なのに、自分の指先だけ触れた先から熱を帯びてゆく。
緊張して少し震えていることに気付かれないように強く握り返したら、吐息だけで笑われた。

「寒くないですか?」
・・・・・火照った指先と頬に触れているくせに、何を訊くのだろう。
くやしくて無意識に唇をとがらせていたことに気づいたのは、かすめるようについばまれた後だった。
不意を衝かれて目を瞠れば、つないだままの手はそのままに、もう片方の掌で頬を優しく包み込まれていた。

吸い込まれそうな程綺麗な瞳に視線をそらす事ができない。
からかうような色は微塵もなくなり、次第に熱を帯びて来る様子に耐えられない。
思わず目を閉じて顔を伏せようとしたら、頬から顎に滑り落ちてきた長い指先がそれを許してはくれなかった。

額に触れる柔らかい髪の感触に近付いた距離を思い知らされる。
続いて触れてきた唇に驚いて、思わず名前を呼んでしまった。

額からこめかみに、軽く睫毛に触れるまであっという間で。
そのまま耳元で名前を囁かれ、軽く耳朶を食まれて甘い痛みに胸が疼く。
その痛みに、もう身動きがとれなくなる。

その隙に、耳に触れていた唇が離れ、顎を捉えていた指は背中に回される。
つないでいたもう片方の手は、絡めていた指先を素早く外されて。
そのまま優しく腰にまわされると、あっという間に抱き寄せられた。
頬に触れるのは彼の指先ではなく、すっぽりと包まれた胸のうち。
・・・・・ひんやりと感じる衣の感触は自分の頬の熱さを自覚させられる。

不意打ちとはいえ、入ってくるなり繰り出された一連の行動に、部屋のすみにまで追い詰められていた。

「・・・・・ねえ、その・・・・・おかえりなさい。」
抱きすくめられ、甘い痛みを胸に残したまま、小さくつぶやいてみる。
聞こえている証拠に、背中に回された腕がさらにきつくなる。
「ただいま帰りました。」

「おかえりなさい。・・・・・そ、その、もう少し腕をゆるめてもらっていいかしら?少し苦しくて・・・・・。」
反射的にゆるんだ腕の中から、そっと顔を上げて、瞳を見つめた。

「・・・・・すみません。苦しかったですか?あなたの姿を見たら、つい確かめたくなって・・・・・。」
「ついって・・・・・。」
「昨日はあなたに会えなくて・・・・・。今日はその分を取り戻そうと思っていました。」
「・・・・・そんなににこにこして・・・・・。またからかっているの?」

「そんなことありません。ただ、あなたに会えなかった禁断症状ですよ。」
「・・・・・。」
一瞬の隙を突いて、かすめるように再びついばまれた。
火照った頬が少し落ち着いたと思っていたのに、再び熱を持つ。
見つめられる瞳に耐えられず視線を少しずらす。
その先に、ほんの一瞬触れただけの唇が見えて、先ほどの柔らかな感触が自らに甦る。

「もっと触れてもいいですか?」
見つめる唇からそっとこぼれだしたその言葉に、返事ができない。
その間に、長い指先がそっと顎を捉える。
軽く上向かされるままに、顔をあげると、鳶色の瞳の奥に灯った熱が揺らめいて見えた。

頬から、耳の後ろへと滑るような指先を感じたすぐ後に、閉じた瞼の上にそっと柔らかな口づけを落とされる。
少し伸びた髪の先を、弄ぶように指先に絡めながら、ふらついた足元を支えるように腰に回されていた腕で再び抱き寄せられた。

かぶさるようにして近づいてきた気配に、かぎなれた花の香りが混じって、はっと我に返った。
ゆっくりと近づいてくる肩をそっと、力強く押し返す。
びくともしなかったけれど、さすがにその行動に驚いたのか、抱き寄せた腕はそのままに、一瞬目を見開いた、怪訝そうな表情が見えた。

「・・・・・いやでしたか?」
その言葉に素直に首を横に振る。
「・・・・・強引でしたか?」
こくりと肯くと、
「・・・・・ごめんなさい。」
照れたようにそう言うと、そっと体を離した。

手を取られたまま、部屋の中央にある長椅子の傍まで戻る。
促されるままに、先に長椅子に腰を下ろすと、にこりと微笑んで、隣に座ってもいいかと確認された。
こくりとうなずいたけれど、近づいた花の香りにまた少し動揺する。
微笑んでいる気配を感じつつも、そちらを向く事ができず、テーブルの上に広げられているグラスと、ぶどう酒のラベルを確認する。

収穫先から届けられたその初々しい味わいを一緒に楽しもうと、用意していたものだ。
机の上に積まれた資料の中には、収穫地の地図と数年の収穫量、その相場が記されていた。
比較的見慣れた資料ではあったが、まだおぼつかない部分が多々あることは否めない。
それでも、会話を楽しむ程度には情報は頭に叩き込んだはずだ。
その試験も兼ねての今夜の試飲会だった。

「少し遅くなってしまって申し訳ありませんでした。」
先ほどとは変わり、落ち着いたいつもと変わらない口調に、少し安心する。

正直、部屋に入ってきた途端に繰り出された攻勢に、覚え込んでいたことも、すっかり頭の中から消え去ってしまっていたことは話したほうがいいだろうか・・・。
「ううん。思っていたよりも遅くなかったわ。お仕事大丈夫だったのかしら?・・・・・それに、この花の香り・・・・・。」
隣に座る彼の顔を見上げると、にっこりと微笑んでいる。

「ちゃんと酔い止めを飲んできています。楽しみにしていたんですよ。」
「じゃ、じゃあ、早速勉強の成果を。今日は何の日か・・・・・。」

言いかけた唇をそっとなぞるように指先で触れられた。
「今日は、ここにある美酒に酔いしれてもいい日なんですよ。」

それはどういう意味なのかと訊ねる前に、深く重ねられた唇に共に酔わされることになった。


~終わり~

オサケハハタチヲスギテカラ。
ということで、イロイロトシツレイイタシマシタ。

えーと。
理未で!と思いつつ。年齢に引っかかって(笑)リヒミレに?…orz。
どちらでも読めてるといいなと思っていますが…いかがだったでしょうか?

今日はフレッシュな→某お酒の解禁日ということで、旅行編で週一のカウントしていることに噴いたのでその辺り。
舞台は初夏ですが、収穫祭は秋ですよ。という…orz。

最後までお付き合いありがとうございました。

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