2017-08

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雨が上がると 25 - 2011.11.30 Wed

雨が上がると虹がかかる。

ということで、何を血迷ったのか(笑)。
降ってきたので書いてみました。

いちゃラブも原作「身代わり伯爵」の雰囲気も無い自己満足です。
途中書きですが日にちが…ということで。

出版社、原作者とは一切関係ありません。
何を読んでも大丈夫な方だけどうぞ。

以下、二次というもので。






11月30日はいいミレの日ということで、ついったでMさまとお話していて「ミレーユファンの集い」という事で書き始めましたが、終わりにたどり着けず…。
本人大変楽しく書いていたのですが、間に合わないのもという事で、近いうちに終わらせたいと思いつつ。
それでも大丈夫だという方だけでお願いします。
そしてなぜか「ミレーユちゃん」。

20120430 一応完結。


『白薔薇祭』

「よう、お嬢!その恰好良く似合っているじゃないか。」
秋晴れのある暖かい日。
未鈴は聞き慣れた声に振り返った。
「・・・。悪かったわね。理久の代わりなのに、白薔薇乙女以外には何だか好評らしくて、宣伝させられているのよ。おかげであちこちで写真一緒に撮る羽目になっているわよ。」
むうっと膨らんだ顔をして、両手を広げながら、その好評な衣装を披露する。

「まあ、そんな顔するなよ。今日は生徒会主催のお祭りなんだろ?剣道部のオレらも総出で舞台の手伝いしてたんだぜ。」
ぽんぽんと軽く肩を叩かれて宥められるが、似合うと言われて嬉しい恰好ではない。
兄の舞台衣装を着た姿は兄そっくりではあるが、唯一靴のヒールの高さだけが違う。
普段の靴よりも大分高い位置は、多少の見晴らしの良さと引き換えに、動きづらいのが難点だ。
軽く肩を叩かれるだけでも、少しよろめきそうになったことは気づかれてはいないだろうが。

「・・・。すごくありがたいけど、そんなに暇人ばっかりなの?」
ひょんなことから知り合った剣道部の面々だったが、練習の時など、部外者の未鈴が顔をのぞかせても嫌な顔をせずに対応してくれる。
「・・・。さりげなく失礼だな。まあ、理人以外は今は比較的手の空いているやつが多いからな。女子と知り合うチャンスは逃しちゃダメだろ。」
「・・・。そんな理由!?・・・でも、そっか、理人は忙しいの?」
剣道部と知り合うきっかけになった人物は、残念ながら今日は会えないらしい。

「ああ、なんだか理事長だか会長だかわからないけど、そっちの方でお呼びがかかっているらしいぜ。あいつも遠縁だからな。」
「・・・。あー、あの腹黒理事長ね。理久と仲がいいから、今日のお祭りも何だか良くわからないけど開催されるのよね。創立何周年だかで、学校お休みなのに。今年限定の高等部主催の企画らしいんだけど。」

きらきらしい理事長と自分の兄は、腹黒い笑顔を浮かべて、未鈴を騒動に巻き込むのが生きがいらしい。
理事長の遠縁でもあり、兄が親友だと言う、未鈴のクラスに来た教育実習生の理人先生は、今では未鈴の家庭教師をしてもらっている。
二人の巻き起こす騒動からいつも助けてくれる理人は未鈴にとっては実の兄より頼れる存在になっていた。

「学園祭が─白百合祭─だから、こっちは─白薔薇祭─だっけ?まあ、理久だからな。」
白薔薇の君と呼ばれる学園一の女性ファンを持つ生徒会長は、極度の自分大好き人間のため、校内のお祭りにもその名を冠してしまったらしい。
「完全に職権濫用よね。演劇部はすごく楽しみだけど。」
「理久主演で、中等部の子が脚本を書いて、出演はあのリエさんとシオンさんだろ?二大美人女優の競演だっていうから、配役も知らされてないのに、この人数だもんなあ。」
ぐるりと見回すだけでも、普段と変わらない人の多さだ。

初等部から大学院まで、幅広い人材の育成を目的に掲げた白百合学園には、年齢も出自も国籍もさまざまな人間が集まるのが特徴だが、その中でも抜きん出て学内に知られる人物が何人か現れる。
その由来は定かではないが、そうした人物は、花の名を冠した愛称で呼ばれる伝統があった。

「そうなのよ!代休だから、自由参加なのよ?リエさんとシオンさんのお芝居が近くで見れるって理久が言うから、あたしも裏方で手伝うって言ったら・・・。シオンさんがこの恰好をしないとキスするって脅すし・・・。リエさんは相手役の理久が忙しいから、練習にあたしが代わりに出ないと出演拒否するっていうし。」
睡蓮の君、紫苑の君と呼ばれるリエとシオンは学園内では知らぬものもいない演劇部のスター女優だ。高等部を卒業した彼女たちの芝居を見られることは、未鈴にとっても嬉しいことだったが。

「ははは!そりゃあ、うらやましい。オレが代わりにやってやりたいくらいだよ。」
美貌を誇る二大女優のそばにいられるなんて男子としては本望だろう。
「くっ。・・・瀬尾さんが白薔薇乙女に襲われてもいいなら代わってあげるわよ。」
悔し紛れに言い放つ。
「あー、それは勘弁。女子高生でもあれは勘弁。ま、その前にその衣装着られないけどな。この筋肉で!っとボート部か?あれ。」
筋肉を見せびらかすようにポーズをつけていたが、ふと視線を転じて未鈴の肩越しを見やる。

「「アニキさーん。」」
学生とは思えない風貌の集団が大きくこちらに手を振っている。
「どうしたの?」
周囲が何事かと未鈴と瀬尾の方に注目するため、慌てて駆け寄っていくと、
「へい。坊っちゃんが黒猫を見かけちまって、この有様でさぁ。」
中央に、赤毛の少年が一人倒れている。
「ああ。そうなの。じゃあ、時間までには大丈夫ね。」
未鈴には見慣れた光景だ。瀬尾は一瞬驚いたようだが、未鈴が平然としているため何も言わない事にしたらしい。
「もちろんっす。坊っちゃんも楽しみにしていましたよ。」
てきぱきと手慣れた様子で介抱する彼らに再び大きく手を振られて見送られる。

「彼らは社会人入学だっけ?」
「そうらしいわね。奥さんや子供がいるって話もきいているわ。」
「へぇぇ。船会社の御曹司だっけ?倒れていた少年。」
奥さんという単語に微妙に反応をした瀬尾だったが、さすがに倒れていた少年の方が気になったらしい。
「ええ。豪華客船で有名らしいけど。猫が苦手らしくて、偶然助けたら、それ以来アニキ呼ばわりなのよね。舞台手伝ってくれるって言ってたけど。剣道部と一緒にならなかった?」
未鈴も最初は驚いたものの、猫が苦手な少年が卒倒して介抱される姿も見慣れてしまった。

「ああ、会場の掃除してたよ。通ってる道場主の師匠が、ボート部の顧問もしてるなんて知らなかったけどな。」
「ええ。学園の先生している事は知っていたんだけど。理人に連れて行ってもらった道場が先生のおうちだなんて知らなかったわ。」
「へえぇ。連れて行ってもらったねぇ。」
思わせぶりにニヤニヤと瀬尾が笑う。
「なによ。その顔。・・・でも、理人すごく強いのね。」
道場での凛とした姿を思い出す。普段見せる優しい姿とは同じ人とは思えない気迫に、未鈴は目が離せなかった。
「まあ、もともとの素質と努力だろうなあ。その上に英才教育で育っているからな。いろんな道場から引く手数多さ。」
「引く手数多って?」
「うちの娘と結婚してあと継いでくれってさ。今日の用事もその関係だろうな。」
「ふうん。」
実習生の時の送別会。クラスの女子に囲まれていた理人を思い出す。
いつもおしゃべりをしていた女子も理人の授業は真面目に取り組んでいた。見惚れていただけかもしれないが。
丁寧な授業は職員室でも好評だったらしい。
未鈴をボンクラと呼んで怖ろしいほどの課題を出す歴史の先生も、面倒見のいいクラスの委員長も、理人が未鈴の家庭教師になったという話をきいて、涙を流さんばかりに喜んでいたこともついでに思い出してしまった。

「お!向こうでセリアちゃんと、エルちゃんが手を振ってるぜ?いつも可愛いなあ。あの二人。」
中庭に設えられた四阿で少女たちがお茶会をしている。

「ちょっと!可愛いのは同感だけど・・・。変な目で見たら締めるわよ?」
「おい、そっちこそ変な勘違いしないでくれよ。大体、彼女たち雲の上のお嬢様方なんだから。ほら、そばにお似合いの中等部の生徒会長が控えてるよ。」

こちらも学内では目立つことこの上ない─青薔薇の君─として有名な美少年だ。
中学生らしからぬ言動とその紳士的な行動で、こちらも女の子に囲まれていそうだが、大の着ぐるみ好きという特殊な趣味のせいで、縁続きのセリアとエル以外には残念ながらお茶会のお誘いは来ないらしい。

「それもそうね。でも、セリアちゃんこんなところにいていいのかしら。」
白ウサギの着ぐるみ姿の隣で優雅にお茶を飲んでいる。
エルがこちらに手を振るのに未鈴も笑顔で応えるが、一つ気になる事があった。
育ちの良さのせいか、生来の気質か、この三人が並んでいる姿はどこかほのぼのとのんびりしている。

「なんでだ?」
瀬尾が不思議そうに質問する。
「彼女の脚本なのに・・・って、あ。」
慌てて未鈴は口を押さえるが、すでに時遅し。

「名前は出てなかったよな。ま、心配するなよ。口外しないから。」
軽く片目を瞑る瀬尾に、
「お、お願いよ?」
と未鈴は念を押す。
「ま、中等部の才媛って言ったら限られるけどな。」
ははは。と笑いながら、瀬尾は未鈴の肩をぽんと叩いた。

「そろそろ、会場入りしなくていいのか?」
白ウサギが懐中時計を取り出して、時間を確認する。
「え!?そういえば、もうそんな時間!?」
慌てたように周りをきょろきょろすると、校舎の時計はすでに関係者が集合する時間を差している。

「私たちも楽しみにしていますわね。」
「客席で待っていますわ。」
「期待しているぞ。」
それぞれに応援の言葉をかけられ、優雅に手を振られて見送られる。

「まあ、そろそろ校内一周して宣伝にもなったんじゃないか?」
「そうね。時間に間に合わないほうが問題だわ!」
そういうと、あっという間に未鈴は講堂へと駆け出した。
「おい、待ってくれよー!」
慌てて瀬尾は後を追いかけるが、すでにその姿は消えていた。

─***書き足し

「まあ、そろそろカイン先生とお迎えにまいろうと思っておりましたの。」
「へ?カイン先生?」
舞台のある講堂へとたどり着くと、関係者以外立ち入り禁止の出入り口ではひんやりとした空気が漂っていた。

「ああ、クリスが教えてくれるから、君の居場所はすぐわかるんだ。」
どこを見ているのかわからない、未鈴の担任のカイン先生と、彼が顧問をしている心霊倶楽部の部長が待ちうけていた。
今回の舞台美術はこの二人が主に取り仕切っていたのだが、一体何を目指していたのか、未鈴には訊く勇気はなかった。

「そ、そうですか。とりあえず間に合ったみたいなので、理久の控え室に向かいます。」
「そうですわね。では、私とご一緒に。」
部長が表情の変わらない笑顔でひんやりと誘う。
「じゃあ、オレはここで。お嬢。頑張れよ!客席にいるからな!」
ひんやりとした雰囲気に少し不安に駆られたミレーユではあったが、瀬尾の明るい声に気合いを入れなおす。

「あれ?理久は?」
案内された控え室には、その主であるはずのフレッドの姿は見当たらない。

「それが・・・。申し上げにくいのですが、問題が起こりまして。」
何も問題はないと言う声音でひんやりとつぶやかれる。

「そうなんですの。理久さんが行方不明になってしまわれて。」
「携帯もつながらないのよ。」
ダブルヒロインが息の合った説明をしてくれる。
頬に手をあてて、困惑した表情は同性の未鈴でもうっとりとするほどの美貌だ。
勝気な瞳でまっすぐに見つめられると、嘘などつけない。と評判の目力には何度も脅かされてきた。

「私の占いによると、ここは代役を立てるが吉と。」
いつのまにやら水晶玉を掲げて、得意の占いスタイルになっていた心霊部部長は、神秘的な眼差しで未鈴を見つめて断言する。

「そういうわけで、未鈴。あなたの出番よ!あたくしたちとあんなに練習したんだから、もちろん台本は覚えているでしょう?」
「わたくしも未鈴さん相手ですと、練習通り上手くできそうな気がしますわ。」
有無を言わせない華やかな微笑と、組み合わされた両手の向こうに見える懇願の眼差しにはすでに、反撃の余地は残してくれていないらしい。

「だ、だからって、あたし舞台で演じた事なんてないんですよ?」
目をむいて、必死の抵抗を試みる未鈴ではあったが、実際に台本の相手をしてきた身であり、どんなに兄のことを恨めしく思っても、たった一人の兄はたった一人なのだ。

「大丈夫よ!あなたの度胸は感嘆に値するもの。あたくしやリエが理久と仲が良いからといって、誤解した白薔薇乙女たちの集いに乗り込んできてくれた時は、それはそれは恰好よかったわよ。」
理久の伝説は多々あれど、白薔薇乙女の伝説は語り継いで二度と起こして欲しくない出来事の一つである。

「だ、だって、あの時は今みたいに、理久が行方不明になっているし。」
放浪癖のある兄は行方不明になるのは日常茶飯事なのだ。
同じように神出鬼没な兄には慣れている未鈴ですら、その出現には度肝を抜かれることしばしである。

白薔薇乙女の集会・・・妖精の箱庭(生徒会室)で繰り広げられる、乙女たちの集いには、職員ですら手を出せないと専らの評判である。
女学生の父兄も名の知れた人物も多く、目に余る娘たちの行動には再三苦情を呈しているらしいが、何の効果もないらしい。

そんな彼女たちに乙女二人が拉致されたと聞いたら、同じ顔をした未鈴が借り出されるのは時間の問題だった。

慌てた未鈴が、放課後の職員室に生徒会室の鍵を取りに行ったところ、事情を訊いた教育実習生の杏先生があっという間に制服を着せ替えて男装させてしまった。
そのうえ、理久とは個人的な知り合いでもあるせいか、白薔薇乙女の前での演説文をあっという間に数枚書き終えてしまった。

職員会議の真っ只中、他に先生もいなかったため、未鈴は不安に思ったが、演説の合い間に、事務員さんが二人を助け出すから、それまで白薔薇乙女の注目をひきつけておいてくれれば良いからとあっという間に作戦は決行されたのだった。
その場の勢いで、未鈴はいつもの理久の様子を思い出しながら、白薔薇乙女の前で演説をしたところ、失神者続出で、急いで二人を助け出す必要もなかったのであった。

「そ、それに、あの時は、演説文が異常に凄まじかったのよ・・・・・。」
その─ぼくの美しさについて─というタイトル文を見た時には、自分が失神するかと思ったのだった。
杏先生が熱烈なファンを持つ創作活動を繰り広げている事を知ったのは、その後の事だったが。
また、理事長と正式に婚約したリエさんと、新進気鋭の画家と学生結婚をしたシオンさんには、白薔薇乙女も興味を失ったらしい。

衝撃の数分間を思い出して、げんなりしていると、
「とにかく。理久が今はいないんだから、身代わりをできるのは未鈴しかいないわ。大丈夫。あたくしたちの特訓にもしっかりとついてきたあなたなんだから、絶対できるわ。」
「そうですわ。有志のお祭りとはいっても、舞台に立つ以上、観客を楽しませるのが女優ですもの。」
右手と左手を二大美人女優にがっしりと握られ、瞳を輝かせて迫られる。

「まあ、観念することだな。」
個性派揃いの生徒たちの中でも、臆することなく、淡々と授業も説教もこなしてしまう担任の一言に、未鈴の頭の中では重々しい鐘が鳴り響いた気がした。

「まあ。さすが未鈴さんですわ。理久さんの衣装も見事に着こなして。」
衣装担当のアリス先生が嬉しそうに、試着する未鈴の様子を眺めている。

「本当に。やはり男装少女の方がただの美少年よりも魅力的なのは否めないわね。」
小物というには、不可思議な大道具の数々を準備していたマリ先生も、未鈴の男装姿にうっとりとしている。
「ほら、こちらもあわせてくださいませんと。」
助手の倉井先生もマリ先生の手助けをしながら、嬉しそうな様子は隠しきれていない。

「ふふふ。今日は学校はお休みなので、息子も見に来ていますのよ。客席の方で今日の舞台を心待ちにしていると思いますわ。」
うっすらと未鈴に化粧も施すアリス先生の手際の良さに未鈴が感心していると、控え室の扉がノックされた。

「どうぞ。」
未鈴が声をかけると、バイオリンを抱えた少年が、おずおずと控え室に入ってきた。
「えーと。最後の打ち合わせなんだけど・・・。・・・あれ?未鈴?」
むすっとした顔がびっくりして、少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「あー。理久が行方不明なの。」
「え?あいつまた行方不明なのか?出てこなくていい時はいっつもいるくせに・・・。」

なぜか理久がお気に入りのバイオリンの名手・レイは、ことあるごとに理久に付きまとわれているらしい。
演奏会が各地、各国で開催されるため、彼も学園には不在のことが多いのだが、どこから調べてくるのか、理久はそのスケジュールを把握しているらしく、空港や会場で鉢合わせすることがあるらしい。

幼馴染である未鈴には、近くの会場だと、チケットを渡してくれるため、なるべく足を運んでいる。
時々、未鈴ではなくて、理久が足を運んでいる時もあるのだが、その時に、二人の間に何かあったらしい。
レイはいつもチケットをペアでくれるため、その時、近所の幼馴染もいっしょだったと、あとで理久に聴いたのだが、要領を得ない二人と、不思議な笑いを浮かべる兄にそれ以上追求して訊くことが出来なかったのだ。

「まあ、いいや。俺も理久じゃなくて、未鈴が舞台に出ていたほうがいい音が出そうだし。」
「そうなの?あたしじゃ良くわかんないけど、レイが演奏してくれるなら、絶対いい舞台になるって断言できるわね!」
無意識に耳が赤くなっているレイと、無邪気に彼の腕を褒め称える未鈴を微笑ましく見つめる女性陣ではあったが、開演時間は刻々と迫っている。名残惜しそうに控え室を去る若き演奏家にも激励の言葉をかけながら、素早く主役の準備をすすめていく。

「さてと、準備は出来ましたか?おお!素敵ですね。織瀬さん!」
のんびりと控え室の扉があけられ、数学担当の先生・・・今回は予算の担当をしてくれたらしい。なんだかんだと生徒会長主催のイベントは教員にも好評を得ているらしく、協力してくれる人員にこと欠かない。
衣装も化粧もばっちりと決めた未鈴の姿に、感嘆のため息が広がった。

「さあ、わたくしたちの舞台が開幕よ?」
いつの間にやら、ヒロインたちも準備が整っていたらしい。
「さあ、観客の皆様に楽しんでいただきますわ!」
「やるからには頂点を目指さないと!」
三人の女優は気合をいれて舞台袖に向かったのであった。


───***書き足し
「かなりのお客様ね。」
にやりと笑ったシオンの強気な発言に、にっこりとリエが微笑む。
「そうでなくては。」

女優二人の熱い眼差しを横目にしつつ、未鈴も気合を入れなおす。負けてはいられない。

最前列には、着飾った白薔薇乙女の会会員たちが、目を爛々と輝かせて、理久の出番を今か今かと待ちかねている。
ぎらぎらとしたその雰囲気に、身代わりの自分がどこまで通用するのか。少し不安になる。

その奥へと目をやると、ガラリと雰囲気が変わり、いかつい男性陣を見ることができる。
剣道着のままの彼らは、時折投げかけられる白薔薇乙女の冷たい視線は、気になるようだが、ボート部と共同戦線を張って、彼女たちの暴走が他の観客たちに及ばないように、それとなく警戒をしているようだ。
中央の通路に沿って、両脇をかためた配置は、まるで花道である。

彼らの防衛線の後方には、理事長と中等部の着ぐるみ会長が陣取っている。
セリアとエル、あれはアリス先生の息子さんだろう。小さな男の子が座っているのが見える。
彼らは同じ音楽の先生についているそうで、教室でも顔見知りなんだそうだ。
着ぐるみが気になるのだろうか。会長の着ぐるみに触れながら、熱心に話しかけている様子が可愛らしい。
少し緊張がほどけた未鈴の耳に、開始のアナウンスが聴こえてきた。

「会場の皆様、お待たせいたしました。高等部生徒会主催、有志による『白百合姫』がいよいよ開幕です。客席は暗くなりますので、足元にお気を付けください。」

ざわざわとしていた観客席が、一斉にシンとなる。いよいよだ。
視線が舞台へと向けられたその瞬間、高らかにラッパの音が響き渡った。

「ようこそ!『白薔薇祭』最大にして、最高の舞台へ!でも、ぼくには、それでもこの広さじゃ足りないようだ。青空の下で輝く美貌を目に焼き付けたい妖精さんたちは、ついておいで!」
緞帳を背にして、スポットライトを浴びた理久は、片手にラッパを持ったまま、そう叫ぶと、舞台から駆け下りた。
最前列に陣取っていた白薔薇乙女たちの悲鳴と興奮をものともせずに、颯爽と花道を出入り口に向かって駆け抜けていく。

妖精さんこと、白薔薇乙女の会員たちは、数瞬の間をおいて我に返ると、あっという間にドレスや振り袖の裾を翻して、理久を追いかけていった。

呆気にとられた観客に、アナウンスが入る。

「剣道部、ボート部の有志の方。ありがとうございました。織瀬理久による『勇者と妖精』はいかがでしたか?次は、高等部の若きヴァイオリニスト、レイによる『青い花と少女』です。皆様、拍手でお迎え下さい。」
落ち着いた声で案内されて、観客も我に返ったのだろう。
一人が拍手を始めると、つられたように、会場のあちらこちらから、拍手の数が増えていった。

アナウンスに合わせて、演奏席にいるレイにスポットライトが当たる。
拍手に促されて、彼は立ち上がると一礼した。

落ち着きを取り戻した会場に、ヴァイオリンの音色が響き渡る。

夢の中にしかない青い花と、初恋の少女への届かない思いが重ねられたこの曲は、よく知られている。
切ない少年の想いと、成長する様子を見事に演奏したレイの腕前に、会場は割れんばかりの拍手であふれかえっていた。

「ありがとうございました。この次の『白百合姫』では彼が音楽を担当しております。そちらのほうもぜひお楽しみください。」

落ち着いたアナウンスは聴き慣れた声だ。未鈴は放送席に座る人物の顔を確認する。未鈴の視線に気づいたのか、こちらを見つめる瞳は優しいものだ。
どうして?という疑問もあったが、先ほどまで緊張していた自分が、別人のように落ち着いていることに気がついて、深く考えるのをやめることにした。

開幕のベルが鳴る。
さあ、いよいよ出番だ。

儚い白百合の妖精に恋をした人間の王子が、妖精の女王の試練に打ち勝ち、二人の恋が成就するお話だ。
ロマンチック過ぎると思わなくもないが、一途な二人の恋心が成就するのは、ただ嬉しく思う。

いつか、好きな人ができたなら、自分もそんな幸せを感じることができるのだろうか。
…一途に白百合姫のために、試練に挑戦する王子の気持ちならわかる気がする。

美しく優しく、芯の強い白百合の妖精を演じる二人は、熱烈な恋愛中だ。
磨きがかかった美しさを目の当たりにしていた練習の間は、自分もそうなれるのだろうか…。と不安になったりもした。
まだ、王子を信じて待ち続ける白百合姫の気持ちはわからない。

気が付くと、拍手の渦の中にいた。

舞台上での挨拶を終えて、観客席を見渡す。
本来なら、ともにこの場にいるはずのセリアは、紅潮した顔をして舞台を見つめていた。
隣にいるシオンとリエが未鈴にこっそりと目配せをする。

舞台が成功した感謝をこめて三人で一斉にそちらを向いてお辞儀をする。
顔をあげて、目があったセリアの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。

「以上で、『白百合姫』を終了いたします。本日の『白薔薇祭』はこれをもって終了いたします。お帰りの際はお忘れ物の無いようにお気を付け下さい。」

アナウンスを背に、舞台袖に戻ると、
「未鈴!素晴らしい舞台だったよ!!」
と、父が飛びついてきた。

いつの間に来ていたのだろうか。シオンとリエはクスリと微笑んで、楽屋のほうを指さすと、優雅に一礼して去っていった。
その先には、意外にも母と祖父の姿もあった。

「エド、他の方の邪魔になるから、楽屋に。ヒロインのお二人が案内してくれるそうだよ。」
苦笑しながら、祖父が父をたしなめる。
「行くわよ。」
呆れた様な母の声を聴いた途端、シャキンと背筋の伸びた父の様子に、祖父と目があって思わず苦笑する。

「おじいちゃんも来てくれたの?お店はどうしたの?」
小声で話しかける未鈴に、
「店はお昼休みにしてきたよ。舞台を見終わってすぐに『弟子』に店に戻るよう伝えてあるから。」
「…そうなんだ。」
幼馴染のパン職人志望。彼も見に来ていたらしい。

専門学校に在学中だが、祖父の腕に惚れて卒業後はオールセンに就職希望だ。
小さい頃から、未鈴のことを暴力女だのなんだのとからかってきた大嫌いな奴だが、パンに関しては本気らしい。
職人肌である祖父の厳しい指導にも音を上げないと認められ、時々アルバイトに来ている。
観客席にいたのであろうが、全然気が付かなかった。

「でも、珍しいわね。パパとママが一緒にいるなんて。」
前を向くと、颯爽と歩く母の後ろを父が追いかけている。
「ああ、理久と理人さんのおかげかな?」
ふふふ。と優しく笑う。
「理久が内緒で計画していたんだよ。学園内なら、二人とも大騒ぎできないだろう?理人さんが、エドを迎えに行って、開演ぎりぎりの客席で再会というわけだよ。」
「なんで理人?」
「おや?知らなかったのかい?エドの教え子だろう?二人で一緒に歩いていても不自然ではないし、理人さんは理事長の遠縁だから、教師陣にも顔が利くし、何より暴走するエドを止められるのは彼か理久しかいないからね。」
未鈴から視線を外して、にっこりと笑う。

父の親族の事情で、結婚しなかった両親。
現在は学園の経営者側に名を連ねている父。
親族の事情が変わり、改めて母に求婚しているが、ことごとく袖にされているらしい。

父とは死別したと聞かされていたが、学園に入学した時に、いずれわかることだからと、祖父に本当のことを教えてもらった。
なぜか事情を知っていた理久によって、学園の一室を借りて紹介された父は、かなり浮世離れした人だった。
感極まって涙を流す、見栄えのする紳士に突然抱きつかれる気持ちは誰がわかってくれるだろうか?
理久の将来の顔…しみじみと自分にもよく似た顔の人でなければ、回し蹴りをお見舞いしているところだった。

両親の間にある感情はわからない。育った文化の違いにも驚いたが、父本人の性格を知るにつけ、なぜ勝気な母が父のような人と恋に落ちたのか、未だに謎である。
ただ、出会ったころであろう、若い頃の父の写真がひっそりと母の部屋にあることは知っている。

「おじいちゃんは、理久の計画を知っていたの?」
「ああ、そうだね。協力してくれるよね。と満面の笑顔で理久に言われたよ。」
「…どうしていつもあたしに教えないのかしら。」
苦笑する祖父に、むうっと未鈴は膨らんだ。

「すみません。男同士の秘密だそうです。」

「そんなのずるいじゃない!…って理人!?」
するりと会話に混じった声に驚かされる。
振り返ると、申し訳そうな顔をした理人がいつの間にか、後ろに立っていた。
「えぇっ?いつの間に?」
「パパとママが一緒にいるなんて。の辺りからです。」
「ほとんどはじめからじゃない。声をかけてくれたらいいのに。」
ははは。と笑う祖父はとっくに気が付いていたようだ。
「すぐに気づいてもらえるかなと思って。」
優しく微笑む理人に、全く気が付かなかった未鈴は少し恥ずかしくなる。

「さてと、未鈴。店のほうが気になるから、先に戻るよ。樹利亜には先に帰ると伝えてあるから。理人さん、未鈴を頼みます。」
「はい。承知しました。」
少しかしこまった様子で、理人は返事をする。
「未鈴。今日はよく頑張ったね。皆さんにも素晴らしかったと伝えておいておくれ。」
優しく未鈴の頭をなでると、きびきびとした様子で出口へと向かっていった。

「おじいちゃんも教えてくれたらいいのに。」
見送りながら、ボソッとつぶやいた未鈴の言葉に理人は苦笑するしかない。
「意地悪よね。理人も。アナウンスだって、すごくびっくりしたのよ?」
むうっとまたもや頬を膨らませた未鈴を見つめる瞳はどことなく嬉しそうだ。
「最初から、アナウンスをする予定ではいたのですが、理久の計画もあったので黙っていました。怒らせてしまったのならすみません。」
「べ、別に、怒ってなんかいないけれど。それに、パパとママが一緒にいるのを見られたからいいのよ。忙しかったでしょう?ありがとう。」
「いいんですよ。スタッフのメンバーにどうしても入りたかったものですから。」
「…?そんなにあなたって演劇が好きだったかしら?」
未鈴は首を傾げる。配役を決める時に、確か理人も候補に挙がっていたが、多忙を理由に断っていたはずだ。

「舞台袖では緊張していたようですが、光の中のあなたはとても輝いていましたよ。放送室から俺だけが見ることができる特権でした。」
未鈴の気持ちをなだめるように、優しく左手をとる。
「妖精役のシオンさんとリエさんの方が何倍も輝いていたわよ?まあ、王子様がキラッキラじゃないと困るし、この衣装だしね?」
未鈴は自分のまとっている、ひらひらのキラキラの衣装を改めて見直す。
「その衣装も素敵ですが、普段の未鈴の姿も俺には輝いて見えますよ。」
さらりと恥ずかしいことを口にする。
ひんやりとした理人の手にぎゅっと握られる自分の手から伝わる体温が何度か上がっている気がした。

「と、とりあえず着替えに行かないとね。いつまでも片づけられないわね。」
「そうですね。打ち上げもあるそうですから。帰りは俺が送っていくことになっていますから、忘れないでくださいね。」
「あなたも一緒に打ち上げに参加するのよね?」
「はい。そのためのアナウンス係でしたので。でも、今日の主役はあなたでしたから、他にも誘われるかもしれないので予約です。」
「他に誘われるなんてことないわ!わかったわ。じゃあ、またあとでね。」
「はい。」

打ち上げが済んだ後、約束通り、未鈴をエスコートして学園の門を出たところ、なぜか、樹利亜とエドにつかまって一緒にオールセンへの帰路に着いたのはまた別の話。


~終わり~

ということで、最後までお付き合いありがとうございました。
4月30日もよいミレの日ということで、以上で終わります。

半年かかったうえにこの出来かい……orz。
ですが、書いていて楽しかったです。
全体の統一性がないのは…そのうち直すかもしれません。
名前については、説明いるでしょうかね…?
ここまで辿り着いた方には大丈夫だと信じております。

パパは外国人で、双子はきっとハーフ。ということで。
打ち上げは白百合剣道部と第五師団ボート部の饗宴で楽しいものだったのではないでしょうか?
ちゃっかり理久さんはセリアちゃんを誘っているんですよ(笑)。
学生さん設定なので、お酒は理未が帰った後の二次会からスタートですよ(笑)。たぶん。
捏造も甚だしいですが、私の限界でした。
楽しんでいただければ幸いです。
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水瓶座  AB型
いくつになっても
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むらっくくん

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